2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

データの分析と結果

◆目的 学習者の自発的な発話における学習者の受身の使用の推移とその特徴を探る。 ◆対象データ:サコダコーパスBの一部 ◆方法 文字化資料から、受身を表わしていると判明した部分を抜き出し、学習者ごとに現れた動詞およびそれが現れる環境(動作主、動作主を…

受身の習得に関する先行研究

◆田口(2001) 外国人児童2名を対象に受身年駅の理解、産出の両面からの調査を1年にわたり実施。 ↓ ・理解は産出に先行 ・使役よりも受身のほうが産出が容易 ・動詞を活用させて使用しているのではなく「おこられる」というセットフレーズとして覚えている◆田…

脱他動詞化受身文と共感度

p.208 ◆脱他動詞化受身文は行為者が話し手自身であっても、客観的な叙述のために行為者を背景化し、動作対象である非情物を主語に立てる受身文。 ◆客観的で中立的な叙述が求められる書き言葉のテクストでは、話し手(書き手)の個人的な共感が現れないように…

脱他動詞化受身文の下位分類

pp.204-205 ◆脱他動詞化受身文の下位分類 ①実現型:行為(対象の変化)の実現の局面を捉える ②状態型:行為の結果の状態を捉える①実現型 ・ラレル形で行為の実現の局面を捉える。 ・基本的に自動vs.他動の体系の穴を埋める機能を果たす。 ・有情行為者が含意…

脱他動詞化受身文の特徴

p.200 ◆本来他動詞的な事態であるものを自動詞的な捉え方に持ち込むための受身文。 ◆通常なら外的な行為者がいなければ起こり得ない事態を、その外的行為者の存在を含意しつつ不問に付し、行為の実現(結果)を中心に据え、自然発生的自動詞相当として述べる…

非情受身の特徴

 人の行為の対象が人でない=<もの・こと>の場合には、基本的にはヲ格しか受動文の主語にはなりえない。(p.69) この手紙はどんな気持ちで書かれたのだろう。(砂糖菓子の壊れるとき) →…はどんな気持ちでこの手紙を書いたのだろう。 工場の門が閉められた…

教室会話の特徴

嶋津(2003) 教師と学習者の役割構築 ◆教師のアクト・使用言語の指導・モデルの提示・発問によるインターアクションの開始・会話の内容の長さの管理・学生の参加の管理・学生の発話の訂正・評価◆教師のスタンス・統率的・規律的・模範的・援助的◆学習者のア…

Increasing Human Capacity for Innovation

DBRは学問分野の境界線を越えて専門知識を交換するための多くの機会を供給する。パートナー間のインターアクションはわれわれが乱雑な状況での複雑な介入を組織化する時、何が起きているかについての洞察につなげるきわめて重要な実践を明らかにする。design…

Relationships Between Design-Based Research and Other Methodologies

Design-based researchは近年系統的であり、無作為化された臨床試験(randomized clinical trials)のための基礎を形成できる学習と指導のcasual accoutsを生むための潜在的に有益な方法論として記述されている。私たちは一般的にdesign-based researchを実践…

日本語教育におけるPAC分析を用いた研究

◆藤田・佐藤(1996) 研究課題:教育実習において実習生と学習者が「日本語の教師」と「日本語の授業」について実習前にどのような認識を持ち、それが実習を通じてどのように変容したか。対象:教育経験がない日本人学部生(6名)、初中級レベルのイギリス人学習…

PAC分析とは―丸山・小澤(2007)

◆PAC分析とは… ・社会心理学と臨床心理学の知見を持つ内藤(1991)によって開発された手法。 個人に着目した質的研究でありながら、デンドログラムに基づき、調査協力者自身の枠組みで分析する。→再現性・信頼性の高い質的研究方法◆PAC分析の要点 ①「自由連想…

まとめ

1)教師のスピーチスタイルは学習者の言語能力が高いほど「だ体」の使用割合が高くなる。 2)スピーチスタイルの交替は次のような指標的機能をもっている。 a.状況の公式性の意識:やりとりの形態が大きいものから小さいものに変化する場面で「です・ます…

結果と考察④―言語能力の差による心理的距離の度合い

◆言語能力の高いクラスでは、対クラス全体、対グループといったより大きなやり取りでの「だ体」の使用率が高くなっている。

結果と考察③―対人関係規定によるスタイルの交替

*教師が学習者との関係、距離をどう測っているかという態度、心理的距離がスタイルの交替に表れている。(ウチ扱いするかソト扱いするか) ◆「教師」としての態度の表明 「だ体」の使用: ・学習者との心理的距離の近さ(相手をウチ扱いする)を示す。 ・「…

結果と考察②―やりとりの形態によるスピーチ・スタイルの交替

◆言語能力の低いクラスにおいて、やり取りの形態が大きいとき(1:クラス全体)よりも小さいとき(1:1)に「だ体」の使用が多い。 ↓ 「です・ます体」:発話者が現行場面を公式なものとして認識しているとき、相手がクラス全体 「だ体」:発話者が現行場面を非…

結果と考察①―学習者の言語能力による教師の「です・ます」体と「だ」体の使用割合

◆教室談話には複数のスピーチ・スタイルが共存している。 ◆いずれの教師によっても「です・ます体」が主なスピーチ・スタイルとして使われている。 ◆「だ体」の使用は学習者の言語能力によって違いが見られる。→学習者の能力が高いほど「だ体」が使用される…

調査方法

◆対象者:海外の大学の教師3名と学習者(1教師2クラス、計6クラス) ◆調査方法: ①授業の発話をテープレコーダーで録音 ②録音資料を文字化 ③授業後フォローアップインタビュー

研究課題

①学習者の言語能力が異なる授業で、教師の「です・ます体」と「だ体」の使用がどのような割合を占めているのか?②学習者の言語能力が同一の授業内で「です・ます体」と「だ体」の交替がどのような指標的機能を持っているか?

教室談話における文体シフトの先行研究

◆Yamashita(1996) 「だ体」の使われ方 ・教師が複雑な表現を言い換える ・学習者の理解の足掛かりとして説明する ・誤答に対するフィードバック ・時間の制限から急いで授業進行しなければならない場合 ・教師の学習者に対する親密感を示す。→円滑なコミュニ…

研究の立場

◆教室場面で教師の使う「です・ます体」と「だ体」がどのように交替(シフト)するのかについて考察。◆「です・ます体」の研究 ・場面・状況の設定や人間関係などの社会的・心理的要因によって決定される「フォーマリティー」(Hinds, 1976)や「ていねいさ」(…

文体シフトの指標的機能により伝えられるメタメッセージ

◆丁寧体の使用 ・状況規定:現行場面が公的場面 ・相手規定:クラス全体 ・自己規定:「教師」または「生徒」として発話→アイデンティティ?? ・対人関係規定:相手をソト扱いする◆普通体の使用 ・状況規定:現行場面が非公的場面 ・相手規定:個人または限…

文体シフトの効果② 発話の促進

◆普通体の使用による発話の促進 教師と生徒の心的距離を縮め、生徒の発話を促す。

文体シフトの効果① 発話の制御

◆丁寧体 対話の相手から距離を置く(=ソトグループとみなす)ことで教師の立場を強化◆普通体 対話の相手をウチグループとみなすことで、通常許されない行為を可能にする。・生徒が普通体、教師が丁寧体で話す→生徒は教師をウチグループとみなし、通常許され…

丁寧体と普通体の標識的機能―全体への発話と個人への発話

◆丁寧体の指標的機能 相手規定:クラス全体に対する発話◆普通体の指標的機能 相手規定:個人、ある特定の生徒のグループ ・教師と生徒双方が丁寧体から普通体にシフト→両者が「個人対個人」の非公式の交渉の場として認識している。

丁寧体と普通体の指標的機能―公的場面と非公的場面

◆丁寧体の指標的機能 ・行為指示、促し、激励:「てください」 →Stubbsでは、これらの発話は教師だけに見られるとしていたが、生徒の発話にも見られた。どうして?? 生徒の発話の指示内容は教室内で習慣となっている「儀礼的行為」の指示 そのため、指名さ…

日本語の教室談話研究

◆茂呂 教師に指名された際の発話→共通語 着席後、隣の生徒への発話→方言 ↓ 共通語=「公的」 方言=「非公式」 *だれに向けられた発話であるかがこの2つのレジスターで示されている。この結果を指標的機能の概念から説明 共通語=現行場面:公的場面、発話…

言語の指標的機能とメタメッセージ

◆Silverstein(1976) 使われる語彙や言語形式が話し手と聞き手との関係において固定されているわけではない。 シフトそのものにも文脈に影響を与えるような指標的機能がある。 (例) 同じ話し手が同じ聞き手に、異なるレベルの二人称代名詞や、方言に切り替え…

はじめに

Sinclair &Coultherd (1975) 教室に置いて教師と生徒は互いの役割を了解し合って発話し、日常会話とは異なった一定の発話交換構造(exchange structure)を持っていることを明らかにした。Stubbs(1983) S-Tモデルに検討を加え、教師には発話場面を言葉によっ…

今後の課題

◆学習者中心のインターアクションを教室活動に導入した場合、 ①クラスルーム・アイデンティティは、どのような多面性を持ち得るのか? ②どのようなアクトとスタンスが参加者の役割構築に貢献しているのか? ③言語学習は促進されるのか?

まとめ

◆教師主導の教室活動においても、コミュニケーションを目的とした自己表現的な発話がなされた場合、インターアクションにおけるある瞬間に置いて「話者」の役割が遂行された。 ◆しかし、学生が自己表現する機会は制限されており、「話者」の役割が長時間遂行…